ハルアトスの姫君―君の始まり―

目元の涙はシャリアスの細い指が掬いあげる。
涙のなくなった目に、シャリアスの唇が触れた。


「…シャリアス…?」

「ここにキスがしたい。」


シャリアスはそう言ってシュリの唇に右手の人差し指をあてた。


「でも、その前に…答えを聞かせて。」


シャリアスの言葉の意図するところは分かっている。
声が戻ったのだ。…叶えたい想いは口にしなければ叶うことはない。


「好き…いなくなったら涙が止まらなくなるくらい…好き…。」


傍にいてくれるのが当たり前すぎて気付かなかった。
明日突然『いなくなる』ことがあり得る世の中になってしまったのだということ。
今を共に笑っていられるからといって、明日もそれが続くとは言えないということも。
明日死ぬかもしれない、そんな希望のない時が今だということを。


「それ、シュリの口から聞くと破壊力抜群だよ。」

「…もう言わない。」

「一度でいいよ。でもその代わり、なかったことにはしないから。」

「私もなかったことにはしない。」

「…僕は何度でも言うけど。」


いきなりぐっと距離が縮まった。
唇が少しでも動いたら触れてしまいそうな距離で、シャリアスは口を開いた。


「シュリ、愛してる。」


唇は甘く、優しく重なった。