ハルアトスの姫君―君の始まり―

「お前のその純粋な眼差しと気高い精神は多かれ少なかれ周りに影響する。
それは悪い影響ではない。
…忘れるなよ、その覚悟。」

「…うん。」


ジアは力強く頷いた。
シュリも笑顔でジアに応えてくれる。


「氷の涙なんだが…。」

「うん。」

「話はまた後日もでいいか?シャリアスの件で少しまだ混乱している。」


シュリが自分の胸の内をこんなに素直に吐露するのは、ジアにとっては初めてのことだった。
最初はジアも驚いて目を丸くしたが、その表情はすぐ笑顔に変わる。


「うん。シュリの準備ができてからでいいよ。
っていうかむしろあたしたちの居候期間が長くなるだけ…なんだけど…。」

「どれだけいてくれても構わない。が、もうしばらく一人にしておいてほしい。今晩から食事は共にする。」

「分かった。じゃあ夕飯も頑張るね!」

「キースもなかなか器用だったはずだ。手伝ってもらえ。」

「だ、大丈夫だよ…?」

「まぁお前が危なっかしい状態で料理していたらキースが飛んでくるだろうな。」

「もー大丈夫だってば!お昼だけどもう準備してくる!また夕飯の時に。」

「ああ。」


バタン、と大きな音を立ててドアは閉められた。
シュリはそのドアを見つめ、気付く。
どうやら自分は微笑んでいるらしい。


「…お前の純粋さは、自分でも知らぬうちに誰かを救うもの、なのかもしれないな。」


魔女の呟きが気高い剣士に聞こえることはなかった。