「ジア。」

「なぁに?」

「お前…『氷の涙』ってモン、知ってるか?」

「氷の涙?なにそれ…。」


ジアにとっては初めて耳にする言葉だ。


「今日、氷の涙について店に聞きに来たばーさんがいたんだ。
氷の涙は、どんな呪いも解くことが出来るらしい。
もしかしたらお前たちの呪いも…。」

「どんな呪いも…解くことが出来る…?」

「幻の宝石、だそーだ。
なんでばーさんがウチの薬屋に来たのかは知らねーけど…まぁ呪い関係だからだろうな。薬で呪いは解けねーけど、解けるって思ってるやつ、結構いるし。」

「そ…っか…そう…だよね。
でも…氷の涙なんて今まで一度も…。」


そんなものがあるとするならば、どうして今まで一度も聞いたことがないのだろう。
そんな疑問を察したクロハが言葉を続ける。

「ああ。一度だって聞いたことはねぇ。
おれもお前も呪いを解く術についてはかなり探してるっていうのに…一度も、だ。
だから怪しいとは思っている。情報源としても明確じゃねーし、氷の涙の存在そのものが疑わしい。
だけどな…もう10年以上探してるのに何の手がかりも掴めねてねぇのが事実だ。
もし仮に氷の涙が存在し、呪いを解くことが出来るのなら…これはチャンスだと思う。
お前たちが元に戻るために、はな。」


真っすぐなクロハの瞳がジアの瞳を捉えた。
ジアは瞬きをせずにその瞳を見つめ返す。


「…氷の涙…。これに絞って情報収集をしていけば少しは見えてくるかもしれない。進むべき道も。」

「…必ず、とは言えねぇが、可能性がないとも言いきれねぇ。」

「そう…よね…。ミア、あなたはどうしたい?」

「…にゃ…にゃん…にゃあ。」

「…そう。」


ミアの言葉にジアは小さく頷いた。