「どこで誰が聞いているか分からへんで。Xでいいわ」
あたりを警戒するように声をひそめて言う。

「なるほど、さすがですね」
なにが『さすが』なのか分からないが、うなずいて雪乃が続けた。
「その友達のXは、すでに警察に捕まっているってことになりますよね?」

「おそらくな。ただ、Xの手元にブツはないわけやろ?そうすると『雪乃さんが持っているのを見ました』っていう証言だけして証拠不十分で釈放されてる可能性もあるわな」

「私が、それらを売っていたとされているんですねぇ」
まるで他人事のようにつぶやく。

「デモ、ユキ、バイヤージャナイデショ?」
キャシーが目を開いて尋ねた。

 バイヤーとは、おそらく売人の事だろう。

「もちろん。でも、どうやってそれを証明すればいいんでしょうか・・・?」