「はい」
意識などしていないのに、知らずに不機嫌な声になる。

「すみません、電話局のものですが」
愛想のよい女性の声がした。

 普段ならドアスコープをのぞくのだが、女性の声に安心したのか雪乃はロックをはずしドアを開けた。

 そのとたん、ドアを強引に開くようにしてズカズカと4人の人間が玄関になだれこんできた。
 驚いて思わず後ずさりをする。悲鳴を出そうにも、のどがカラカラに渇いていて声にならない。

「山本雪乃さんね?」
先ほどとはうってかわって事務的な口調の女性が言った。残りはスーツを着た男性だった。女性の歳は40くらいだろうか、黒ぶちの眼鏡に髪をひとつにしばっている。

「どうなの?山本雪乃さんで間違いないの?」
有無を言わせず強い口調でふたたび聞いてくる。

 雪乃は声を出せないままガクガクとうなずくしかなかった。