男は黒人で、極度に痩せ細っていた。

 チラリと和美を見ると、微笑みかけてくる。

 和美はふらりと立ち上がると、その男を改めて観察した。

 シャツはだらしなくズボンから半分出ており、目はくぼんで憔悴しているように見えた。ホームレスか?とも思ったが、すぐにそれを打ち消した。こういう男は前にも見たことがあったからだ。

 男は、和美に意味ありげな視線を送ると、そのまま路地裏へ消えた。

 しばらく和美はいなくなった空間を眺めていたが大きく息を吐き出すと、自ら路地裏へと足を進めていった。


 男は、路地裏の物陰にいた。


 和美が来るのを知っていたように、
「コンニチワ」
と笑った。

「あるの、あれ?」
小声で尋ねる和美に、男は、
「ヤッパリ。ジャンキーダトオモッタ」
とうれしそうに言いながら、靴を脱いだ。