あてのないまま和美は東京へ来た。

 ここにくれば何かが変わるかもしれない。そんな漠然とした希望があるだけだった。

 両親からもらった20万円は交通費以外は手をつけていない。

___1年たったら電話しろ


 その言葉が頭から離れなかった。

「1年たったら何が変わるって言うんや」
苛立ちから言葉が口からこぼれたが、行き交う人々は無関心に通り過ぎていった。

 腹が立った。

 すべてに怒りを覚える。

 コンビニでトイレを済ますと、レジの横にある求人誌を手に表に出た。

 朝早い時間というのに、誰もが何かを目指して必死に歩いている。

 それはまるで働きアリのようだ。