でも、負けたくなかった。


こんな痛みになんか、晃汰になんか、

隣高になんか、自分になんか…

絶対、負けたくなかった。


「円ちゃん!!」

ワントップのあたしには、必ずボールが集まってくる。

そのパスは、皆の気持ちが込められていて…凄く凄く、重く感じた。


ーパシッ

相手のGKが、いとも簡単にあたしのシュートを止める。

強がりだけじゃどうにもならないほど、あたしの足は大きく腫れていた。


「ロスタイム、3分だぞーっ!!!!」

大輔先輩の声を聞き、あたしは我に返った。


無駄に打つだけじゃ駄目だ…。

足も持たないし、あんなシュートじゃゴールにならない。


…1本、狙わなきゃ。


その時、晃汰から絶妙なセンタリング(ゴール前にいるFWに出すパスの事)が上がった。

“ここだ!!!!”

そう思った時には、足の痛みなんて頭からなくなっていた。



ーバスッ……

一か八かで打った、ボレーシュート。


あたしの足から放たれたボールは、ゴールネットに突き刺さっていた。


ーピッ ピッ ピーーッ!!


試合終了の、ホイッスル。

あたしは思わず、その場に座り込んでしまった。


よかった…。あのシュート、打ってよかった…!!


「練習試合の結果は…1-0、2-0で、俺らの勝利ーっ!!!!」