「怜央ちゃん……」


茜の大きな瞳から、涙が溢れては零れた。


そして紅い瞳の怜央を見上げると、その唇に、自分の唇を押し付けた。


初めてのキスだった。


怜央にとっても、茜にとっても。


優しく、温かなキスは、凍った怜央の心を溶かしていった。


雨が止み、雲が晴れていった。


そして、風が止むと同時に、怜央の身体はぐらりと傾き、茜の胸に倒れた。


怜央の身体を支えきれなかった茜は、床に膝をついた。


日向と假屋崎が駆け寄る。


怜央は茜の胸の中で、気を失うように眠っていた。


その頬には赤みが差し、冷徹な雰囲気はすっかり消え去っていた。



少しだけ幼さ残る寝顔からは、可愛らしい寝息が零れていた―――