「そっか……」


茜は残念なような、安心するかのような、複雑な気持ちを込めたため息を吐いた。


「茜はどうするのか?」とは聞かなかった。


もう怜央には、辞めろと言える立場ではないと思っていた。


そう遠くない未来、怜央は茜から姿を消さなければいけない。


茜の将来を、怜央が勝手に決めることなど、できるはずがなかった。


「まあ、しゃあないな」


日向はそう言い、怜央の肩を組んで校舎の中に入っていった。


馴れ馴れしい日向の態度が、嫌とは思わなくなっていた。


逆に、もう人間として暮らせる時間が少ないことを知った怜央には、日向の優しさが心地よかった。


いい奴だということは、一緒にいればいるほど感じることができた。


こいつになら、茜を任せてやってもいいかもしれない。


横目で、太陽のように明るい笑顔を見せる日向を見ながら、ふとそんなことを思った。