「あら、二人共おかえりなさい。
バドもうちに上がってお茶でも飲んでいって」


真央はずっと待ってたかのような笑顔で、とても自然に二人を迎えた。



「はあ!? 知り合い!?」


礼央は真央とバドを交互に見て叫んだ。


「ええ、もちろん。さっき言ったじゃないですか。あの水筒、シャオン様からいただいたって」


「やだバド。今はもうシャオンじゃないの、ここでは真央なのよ」


ケラケラと笑いながら手を振る真央に、怜央は開いた口が塞がらなかった。


普通の……いや、普通よりちょっと鈍くさい母親だと思っていたのに、得体の知れない男と知り合いで、なおかつ昔はシャオンという名前だったと衝撃的な発言をサラリと言う。



怜央は、今まで生きてきた自分の中の常識が粉々に壊れていくのを感じたのだった。

「お気持ちは嬉しいですが、わたくしはこれで失礼致します。
ヴラド様に宜しくお伝えください」


「そうね、残念だけど仕方ないわ。バドは忙しいものね。
ヴラドも久しぶりにバドに会ったら喜ぶと思うのに残念だわ。
最近地下にこもりっきりなの」