「怜央、朝ごはんできてるわよ~」


リビングから声が聞こえ、怜央は返事をせずにリビングへと向かった。


リビングの扉を開けると、フリルの付いた真っ白なエプロンを着た童顔の母親が笑顔で怜央を迎えた。


「おはよう、今日から高校生ね。早く食べないと、新学期一日目から遅刻しちゃうわよ」


「いい、あんまり腹減ってないから」


「真央がせっかく作ってくれたんだから食べなさい」


テーブルに座っていたヴラドから言われ、怜央はそこで初めてヴラドがいたことに気付いて眉を顰(ひそ)めた。


「親父がこんな時間に起きてるなんて珍しいじゃん」


「今日からお仕事忙しくなるみたいで、しばらく研究所に籠ってなきゃいけないらしいのよ。しばらく会えないかもしれないから、一緒にご飯食べてったら?」


「別に寂しくないし。むしろせいせいするね」


怜央の言葉にヴラドは鼻で笑ってコーヒーを啜った。


全く気に留めてない様子に怜央は少し苛ついた。


普段苛つくことも動揺することもないのに、どうしてか父親のこととなると子供のような態度を取ってしまう。


唯一、全てにおいて勝てない相手だからだろうか。