「俺、いつでも人間に戻れる満月作ってもらう代わりに、密偵の仕事やることになってん。
この満月、魔界へ連絡できる機能もあって、逐一報告してたんや」


「なんで俺に黙ってたんだよ!」


すると日向は人差し指でポリポリと頬を掻きながら、ばつが悪そうに視線を泳がせた。


「いやぁ、密偵の役割にレオを監視するってのもあって……。
しゃあないやん? 
お前王子やし」


「王子言うなっ!」


レオと日向がいつものようにギャアギャア言い合っているのを、真央は止めることなく微笑ましそうに見つめ、ヴラドは最近真央が塞ぎこみがちだったので遠慮していた夜の営みが解禁されるであろうことを考えていた。


レオや真央に魔力が戻っているのを内緒にしていたのは、レオに魔界の王になってほしかった為だ。


真央に真実を告げれば嘘が下手な真央のこと、きっとバレると危惧し、ラシードと口裏を合わせていたのである。


ヴラドが魔力を取り戻したと知れば、レオは「親父が王に戻ればいいだろ!」と言い出しかねない。


しかしもうバレてしまった以上、次なる一手を考えなければいけなかった。


だがそんなことよりも、ヴラドの頭は、今日真央をどう愛そうかということで頭がいっぱいだった。


そんな中、一人だけ冷静なバドがボソリと言った。


「ところで、血の儀式を行った茜様は大丈夫なのでしょうか?」


その一言で空気が一瞬にして止まったということは、言うまでもない。