意識を手放そうとしたその時、窓が勢いよく割れる音がした。


窓を割って部屋の中に入ってきたのは、一匹の黒い狼だった。


狼は、あまりの怒りで毛が逆立ち、鼻先に皺を寄せ鋭い牙を出し唸っていた。


茜はその狼を瞳に捉え、そして瞼を閉じた。


「無粋な狼め」


意識を失った茜を床に横たわらせ、キルリアは日向を睨み付けた。


「狼に何ができる」


「俺を侮るなよ」


日向は首輪についている丸い玉を見つめた。


するとその玉が煌々と光りだした。


日向の瞳が紅くなり、狼の身体がどんどん人間の身体に変貌していく。