茜はいつものように、帰りのショートホームルームが終わるとすぐに通学鞄を肩にかけ教室を出た。


隣の席のレオに一瞬目をやったが、レオは女の子たちに囲まれていた。


成績優秀なレオに勉強を教えてもらおうと、休み時間や帰りの時間になると多くの女子生徒が群がるのだ。


もちろん彼女たちの目的は勉学向上ではない。


眉目秀麗なレオに少しでも近付きたいがためである。


以前のレオなら面倒くさがって相手にせず、冷たい態度を隠すことなく彼女たちに向けていたが、魔界から戻ったレオは自分が人間ではない負い目がある。


少しでも人間らしく普通に接しようと心がけていたので、彼女たちをむげにすることができないでいた。


対して茜には冷たい態度を取り続けていた。


茜に近付くと自分をコントロールできなくなる恐れがあったからだ。


ヴァンパイアに覚醒してから知ったことだが、人間には独特の血の匂いが身体から溢れており、その香りが濃い者、薄い者、美味しそうな香りの者、腐ったような香りのする者など個人差がある。


その香りを嗅ぐと食欲と性欲が同時に刺激される。


ヴァンパイアにとって食欲と性欲はとてもよく似た欲求で、性交は力を漲らせる栄養補給のようなものなのだ。