「まだ人間界に残りたいなら勝手に残ればいい。
俺の目的はこんな小さなことじゃない」


すると、不満を垂れていた魔物たちが顔を見合わせ、口を噤んだ。


その中で汚い小男が、假屋崎の機嫌を図るように恐る恐る口を開いた。


「キルリア様のお力なら、王子を殺すのも簡単かと思いますが、それでは赤銀を使って、ラシードやヴラドの目を人間界から逸らせた意味がなくなってしまいます。

当初の予定では、魔王が人間界から目を逸らせた隙に人間をさらい金を貯め、次なる手を打つ布石とすることではございませんでしたか?」


「そうだったな。

だがこのままみすみすと魔界に帰るのも腹が立つ。
あの生意気な王子に一泡吹かせてやろう」


くつくつと不気味に笑う假屋崎に、魔物たちは悪寒を感じながらも一緒になって笑った。


不気味な渦巻き状の雲に吸い込まれるように、彼らの笑い声は空高く吸い込ませていった。