渦巻き状の不気味な鉛色の雲の下で、雑木林に隠れるように廃工場がひっそりと佇んでいた。


鍍金(めっき)が剥がれたタンクや、地面に転がっている折れた鉄パイプ。


錆びついた赤茶色の建物には緑色の蔦(つた)が広がっていた。


存在を忘れられたかのように、静かに時間が流れていた廃墟の中で、様々な声や息遣いが聞こえてくる。


廃墟内は、小動物ほどの大きさの様々な形をした魔物たちが身を寄せ合っていた。


彼らの中では空を飛べる者、飛べない者、バッタのように跳ねる者、四本足で歩く者や、二足歩行の者など実に様々な種類のコクーンがいる。


甲高い声やどもり声、言葉を話せない者などが、時に喧嘩をしたり、時に共食いをしたりしながら、生活を共にしていた。


その中で異彩を放っているのが、捨てられたソファに座っている一人の少年だ。


白く美しい顔をしたその少年は、足を組み何やら考え事をしているようだった。


時々、狂ったように泣き叫ぶ人間の甲高い声が建物内にこだまするが、少年は眉一つ動かさない。