「そうやろな。
魔力を封じる力は、ほんの一部の本当に強い者しか扱えんって聞いたで。

それにあれだけの魔物を率いてる。
力が強くなければ、奴らは従わんで」


「そうだな。
秘策を考えずに乗り込んだら無駄死にしに行くようなもんだ」


日向は黙り込んだ。


その通りだった。


謙太が囚われ焦る気持ちはあるけれど、助け出さなければ意味がない。


自分が死んでは元も子もないのだ。


重たい空気が二人を包み込んだ。


その日、二人が再び言葉を交わすことはなかった。


策が全く思い浮かばなかったからである。


『死』という現実が、二人の肩に重くのしかかっていた。