「家は分かった。どうやら廃墟(はいきょ)に住んでるようや」


「廃墟? そんな所、この近くにあったか?」


「県道沿いに宮丹峠があるやろ。
あの峠の脇道をずっと行くと廃工場があるの知らん?
元は小さなセメント工場だったんが潰れてそのままになっとるんやけど」


「行ったことない。あんな所、誰も通らないだろ」


「そやねん。そんな辺境な場所をわざわざ選んでるねん」


「何のために」


「誘拐した人間達を一時的に置いとくためや。
それだけやない。あの廃工場には魔物がうじゃうじゃいるで」


「……何?」


レオの目が険しくなった。


日向も先ほど見てきたことを正確に伝えようと、レオの瞳を真っ直ぐに見つめた。


「数人の人間たちが工場内にある檻の中に入れられとった。
生きとったが憔悴しきって声も出せないような状態やった。
なんとか逃がしてやろうとしたんやけど、小兎くらいのコウモリみたいな奴に見つかってしもた。
一匹一匹の魔物の力はそんなに強くなさそうやねんけど、数が多すぎる。
あんなのに囲まれたら一巻の終わりや。
逃げるので精一杯やった。
情けない話や」