「俺は身分も高くないし、仕えてくれと頼んでもいない。

俺の周りでウロチョロするのは止めてくれ」


「いいえ、それはできません。

わたくしはさるお方から任じられてここに来ました」


「人違いじゃないのか?」


「いいえ、神無月怜央様。


わたくしはあなた様がどのような身分で、どのような力を持っているのか充分に存じあげております」


怜央は男が自分の名前を口にしたことに驚いた。


そして、細い銀縁の眼鏡から覗くオリーブ色の双眼の力強さに、この男が全くのでたらめを言っているわけではない気がして恐くなった。


「何のために……」


「何のために?

良いご質問でございます。


わたくしは怜央様をお守りするために参りました」


「守る? 誰から?」


「怜央様ご自身のお力から……」