茜を見送って、自分の家の方向へ振り返ると、そこにはさっきまではいなかったはずの男が一人立っていた。


まるで、突然そこに現れたかのように気配が全くしていなかったので、思わずぎょっとした。


その男は今朝見かけた不思議な男だった。


警戒心を露わに男を睨みつけた。


「お前……今朝もいただろ。誰なんだ?

 俺に何か用があるのか?」


怜央に話しかけられた男は口角を上げ、上品な笑顔を見せた。


「わたくしの名前はバド・ツェリス。


身分の高い方に仕える、高級執事でございます」


「執事? 執事がどうしてここに?」


「詳しくはまだ語ることができませんが、あなた様に仕えに参りました」


「俺に?」


怜央の言葉に、バド・ツェリスと名乗った男は上品に頷いた。