一方、レオに言われた通りに今朝も茜を送っていった日向は、人間の姿に戻りぶらぶらと町を歩いていた。


足は自然と見知った所へ向かっていく。


隣町まで歩を進め、真っ白い大きな病院を見上げた。


看板には『柊木総合病院』と書かれてある。


中に入ってみようかと思ったが、勇気が出なかった。


病院内に入ったところで、院長を務める義理の父親に会える確率は限りなく低いだろう。


ウロチョロしていて怪しまれたりしたら大変だ。


日向はそうやって中に入らない理由付けを探して自分を納得させた。


本当は会った時、自分のことを忘れている父親と直面するのが怖かった。


日向は足を右に向けて、再び歩き出した。


今度は7歳から住んでいた家へ向かっていた。


病院の院長の家だけあって、とても大きい家だ。


高い塀に囲まれているため、中を窺(うかが)い知ることはできない。


日向は、塀の外から唯一見える家の屋根をじっと見つめた。