「茜ちゃんに言わへんのか?」


「何を?」


「何をって……」


「記憶を失ってるんだ。
無理に思い出させなくていい。
このまま遠くから茜を見守って、問題が解決したら今度こそ茜とさよならするよ」


「ええんか?」


「仕方ないだろ。
こうするしかないんだから……」


日向は遠くを見つめるレオの横顔を見上げながら、複雑な思いでいっぱいだった。


二人の絆にはとても敵わないので茜のことを諦めようと思っていた日向だったが、二人が結ばれないなら自分が諦めた意味もない。


しかし、レオと同じで狼人間になった日向もまた、茜とは住む世界の違う住人になってしまったのだ。


日向はレオが茜のことを好きなことを知っている。


茜を守るために人間界に来たことも。


できることなら、二人には幸せになってもらいたい。


けれど、どうすれば二人が結ばれるのか、どんなに頭を捻っても幸せな結末が想像できなかった。