――――――…… 白い世界が広がっていた。 遠くの方には、黒い靄が顔を覆っている男が立っている。 『茜……』 男はいつものように茜の名を呼ぶ。 耳に心地いい声色だ。 「行かないで!あなたは誰なの!?」 茜は叫ぶ。 『もうすぐ会えるよ』 男は言った。 ……もうすぐ会える? 初めて男は茜の名前以外を口にした。