「そうだよね。
何も変わってないよね。
私、どうしちゃったんだろう」


「そんな気分になる時もあるよ」


茜の涙が止まり、落ち着いてくると、假屋崎は抱きしめていた腕の力を緩めた。


「茜は、付き合ってる人いるの?」


「いないよ」


「好きな人は?」


一瞬、夢の中の男の人を思い出して、返事に詰まった。


「いるんだ」


「ううん、いないよ」


「そっか。良かった」


假屋崎は優しい笑顔で、茜の頬を指の背で触れた。