その後、假屋崎はいつもの表情に変わり、茜は假屋崎を怖いと思ってしまったことを頭の片隅に追いやった。


仕事も終わり、帰るために二人並んで校庭を歩いていると、練習中だったサッカー部からボールが茜に向かって飛んできた。


ボールは威力が衰えることなく飛んできたので、気が付いた時には避けることのできない距離にまで近付いていた。


「危ないっ!」


サッカー部から声が上げる。


ぶつかる!と思い目を固く閉じた瞬間、誰かに抱きしめられるような感触がした。


痛みを感じず、恐る恐る目を開けると、茜の肩を抱き、ボールの飛んできた方向に背を向けている假屋崎がいた。


地面には壊れた眼鏡の横にサッカーボールが転がっていた。


「假屋崎君!?」


茜が真っ青になりながら顔を上げると、こめかみの部分がほんの少しだけ赤くなっている假屋崎の顔が見えた。


そしてその顔に、茜は息を飲んだ。


「怪我はない?」


假屋崎が、甘い声を落とす。


茜は茫然と目を見開いたまま、コクリと頷いた。


「良かった」