「そうですね。
レオ様が一番の適任者かもしれない。
今やレオ様の力は秘密結社の精鋭部隊と同じかそれ以上。

この男と一緒にいた時期もありますし、魔界の王になるならば多少の危険は経験しておいた方がレオ様のためになります。
レオ様のお力を信じ、賭けてみてもよろしいのでは?」


魔界の王になることに関しては納得できなかったが、ヴラドは魔界の王という言葉に反応し、それまで頑なに拒んでいたのに心が揺れ動き始めたようだった。


もう一声か。


レオは奥の手を出した。


「もしも人間界に行かせてくれなかったら、俺は一生母さんと口をきかないからな」


突然真央のことが出てきたので、ヴラドはぎょっとした。


ヴラドの一番の弱みが真央であることをレオはよく知っていた。


そしてその弱みに付け込んできた息子に、ヴラドは眉を寄せた。


「俺に魔界の王なんてとんでもないことをさせようとして、なおかつ自分は手を貸さず人間のまま生きていきたいと言う母さんを許してはいないんだ。

けど、人間界に行かせてくれたら母さんのことを許してやってもいい」


ヴラドはレオに非難されて、激しく動揺し涙を流していた真央のことを思い出していた。


もしもここでレオの願いを却下すれば、自分と似て頑固なレオは本当に一生真央と口をきかなくなるだろう。


そうなった時の真央の落胆を想像するとヴラドの胸は痛んだ。