「俺は……」


この国の王子だ、とは言いたくなかった。


王子であるという現実をレオ自身が認めたくなかったからである。


言い渋るレオに門番は警戒心を深めていく。


考えあぐねていると、日向が「おっちゃん、俺や俺や」と明るい口調で門番に言った。


言葉を発したのが狼であることに気付くと、門番二人は一瞬ぎょっとした。


日向は空を見上げて、そこに満月が輝いていることを確認すると、月明かりを浴びて人間の姿に戻っていった。


人間になった日向の姿を見た門番は「おお!君か!」と親しげな声を掛けた。


「こいつ、王子やねん。通してやってや」


日向はレオの肩に手を置いて言った。


「王子!?」


門番は驚いた表情でレオを見て、門番二人は顔を寄せ合ってぼそぼそと話し始めた。


「そういえば今日、王子が王に謁見したらしいぞ」


「言われてみれば、王に似てなくもないが。
おい!あの胸に掲げた紋章……!」


「王族の証だ!」