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漆黒の髪に、青紫色の瞳。


男の子にしては小さな顔によく通った長い鼻。


この一年で7㎝近く伸びた背丈は、もうすぐ180㎝に届きそうだった。


誰もが息を飲む程眉目秀麗な少年は、真新しい制服に身を包み、眉一つ動かさずに全身鏡を見てネクタイを締めていた。


今日で高校一年生になるこの少年の名前は、神無月 怜央(かんなづき れお)。


県内でもトップクラスの高校に首席で合格する程頭も良く、本人ですら戸惑うくらい運動神経が良かった。


人間離れした能力を持つ怜央だったが、非科学的なことは大嫌いだった。


例えば幽霊だとか魔物だとかヴァンパイアだとか、物語に出てくるような空想上の生き物が大嫌いなのだ。



それは実の父親が『吸血鬼伝承における歴史の考察』という本を出してベストセラーになったことが深く関係していた。