「日向は人間界に戻りたいとは思わないのか?」


「思わんことはないけど……仕方ないやん」


「家族にもう会えなくても?」


「家族か……。
ああ、忘れとったわ。
そういや魔族になると人間だった頃の記憶がなくなっていくんやったな。
言われても実感なかったけど、ほんまなんやなぁ」


「記憶が薄れていくのは悲しいか?」


「悲しいっていうか、寂しいかんじはするかもなぁ。
けど俺はさ、安心する気持ちの方が強いねん」


「安心?」


「俺、医者の息子やってん。
柊木総合病院、知らん?」


「ああ! あの隣町の大きな病院のことか!? 
日向、院長の息子だったのか!?」


「そっ。でも、血は繋がってないけどな」


レオは一瞬息を吸った。


重大なことを話しているのに、日向の声色は変わらない。