中に両親がいると知っていても、見慣れない家は他人の家のようで気軽にずかずかと入っていけるものではない。


レオは気づまりを感じながらも、バドの後ろに続いて家の中に入っていった。


甘い香りのする扉を開けると、そこは柔らかな陽の光が差し込むダイニングキッチンだった。


キッチンには白いワンピースにいつものエプロンをつけた真央が立っており、テーブルには優雅に紅茶を飲んで座っているヴラドの姿があった。


「怜央! ようやく起きたのね! 
体は大丈夫なの?」


真央はレオの元に走って駆け寄り、心配そうに体を見つめた。


「なんともない、平気だ」


本当はまだちょっと怠いのだが、真央の手前少し強がって見せた。


「そう、良かった! ずっと心配してたのよ。
それにしても怜央、その服なんてかっこいいの! よく似合ってる!」


「こんな服、邪魔なだけだ」


「そんなことない! 凄く素敵! 
若い頃のヴラドにどんどん似てきてるわね」


その言葉に、紅茶を飲んでいたヴラドの動きが止まって、ようやく今レオの存在に気が付いたかのように、ゆっくりとレオを見た。


ヴラドの視線がレオに向けられると、レオは自然に身体が強張った。


「俺の方がいい男だ」


ヴラドは口角を少しだけ上げて、笑うように言った。


冗談なのか本気なのか、その場にいる誰もが判断できなかった。