両親に会うだけなのに、レオの胸はラシードと会う時よりも緊張していた。


小鳥が鳴くような高い呼び鈴の音がいつまでもレオの耳に残った。


「は~い、どなたぁ?」


レオの緊張とは裏腹に、間の抜けたいつもの母親の声がした。


咄嗟のことに、なんと返事したらいいか分からず戸惑っていると、バドが「わたくしでございます。レオ様もご一緒です」と代わりに返事をしてくれた。


「あら! 入って入って! 
鍵は開いてるから。今、手が離せないの」


レオはバドを横目に見ると、バドは何も言わずに手の平を玄関に向け中へ入るよう促した。


玄関の取っ手を引くと、確かに鍵はかかっておらず簡単に開いた。


玄関扉を開けると、目の前に伸びる長い廊下が真っ先に目に飛び込んでいた。


品のいい茶色のフローリングとアール天井の先には、螺旋(らせん)階段の終わりが垣間見えていた。