「それは残念でございます。
そうそう、茜様なら記憶を消して無事にご自宅に戻られました。
壊れた学校の窓も全て元通りにしておきましたし、レオ様が人間界にいらしたことを知る者の記憶も全て消しておきました。

レオ様が人間界に戻らなくても大丈夫なように、全ての処理をいたしましたのでご心配なさらず」


「は!?」


レオは突然のことに頭がついていかず、思い切り渋面を作りバドを睨み付けた。


バドはにこにこと笑っている。


「ちょっと待て。どういうことだ? 
俺に関する記憶を消しただと?」


「はい。必要ありませんから」


「茜のもか?」


「もちろんでございます」


「ふざけんなっ!」


レオは声を荒げ、サイドテーブルに乗っていたお盆を手で払った。


ワイングラスが音を立てて割れた。