犬はレオを見ると、尻尾を横に振り、何の躊躇(ためら)いもなく寝室に入ってきた。


「喉が渇いていると思いまして、人間の血が数滴入った飲み物をご用意しました」


バドはそういうと、お盆の上に載ったワイングラスになみなみと注がれた真っ赤な飲み物を、ベッド脇のサイドテーブルに置いた。


「確かに喉は渇いてるが……。人間の血が入った飲み物なんて飲めるか」


「おや。以前これと同じものをわたくしがご用意いたしました時は、美味しそうに飲んでおりましたが」


「は?」


「毎日飲んでいたと伺っています」


レオはまさかと思って、ワイングラスに手を取ると少し匂いを嗅いでから、一口舐める程度に飲んでみた。


するとそれは紛れもなく、毎日レオが好んで飲んでいたジュースの味がした。


一口、口にすると体が我慢できなくなって一気に飲み干した。


体に力が漲っていくようだった。