「止めて! 怜央ちゃんを連れていかないで!
怜央ちゃんがいなくなったら、あたし。あたし……!」


「大丈夫です。悲しむことは何もありません。
あなた様は全て忘れるのですから……」


バドが手をかざすと茜は眠りに落ちた。


假屋崎も同様に地面に横になって寝ている。


バドは学校を正面に見据え、両手をかざした。


すると壊れた学校中の窓ガラスが全て元通りになった。


バドは倒れている日向とレオを悲しげに見詰めた。


「これでいいのでしょうか。ヴラド様。
わたくしは……」


バドは天を見上げ、言いかけた言葉を飲み込んだ。


「わたくしは執事。
ご主人様の命令に従うだけでございます」


バドの言葉は風に吹かれて散っていった。


そして校庭には、茜と假屋崎だけが残された。