茜は動かなくなった日向を抱きかかえながら、赤銀の末路を声も出せずに見つめていた。


校庭に静寂が訪れた。


長い長い静寂だった。


静寂を打ち破ったのは、ずっと息さえも殺すように身を縮ませ身動き一つ取らなかった假屋崎だった。


假屋崎は、眼鏡をくいっと上に持ち上げた。


「赤銀は……死んだのでしょうか?」


赤銀の姿形さえ分からないほど、炎は強かった。


「たぶん……」


茜が答えた。


「じゃあ、もう終わったのですね」


假屋崎の眼鏡がキラリと光り、口元には不気味な笑みがひろがった。


その笑みの理由を、茜は、恐怖が消え去り、ほっとしたから笑ったのだと思った。


だが、茜は全く喜ぶことができなかった。


言いようのない悲しみが込み上げてくる。


日向は、茜を守って死んだ。


そう思うと息が詰まりそうなほど苦しかった。