日向の胸に、赤銀の鋭利な腕が貫通していたからである。


茜は日向の背中から腕が出てきたのを見て、一瞬事の重大さに気が付かなかった。


赤銀が突き刺した腕を戻し、日向の背中に大きな穴が開き、そこから血がじんわりと浮き出てきたのを見て、初めて理解した。


「……嫌――――――――!!!!」


茜の悲鳴が校庭に響いた。


レオは赤銀の後ろ姿に日向が隠れていたので、何が起こったのか分からなかった。


しかし、茜の叫びと同時に日向の体が宙からドサリと地面に落ち、丸い穴の開いた胸と赤銀の腕から滴り落ちる腕を見て言葉を失った。


レオの中で何かがプツリと切れた。


嵐の前の静けさのようだった。


時が止まったように、風も音も全てが息を潜めていた。