「そう、ヴラド・ツェペシュは人間だ。
正しく言うなら〝人間になってしまった〟だな。
ある一人の人間の女のせいで」


怜央の血がざわざわっと波打った。


怜央の中で流れる二人の血が反応したのかもしれなかった。


「ヴラド・ツェペシュが気まぐれで買った人間が、シャオンと呼ばれる極上の血を持つ女だった。
二人は互いに好意を寄せていることに気が付かなかった。

ヴラド・ツェペシュがそのことに気が付いていたら、あんなことにならずに済んだのに。
女には事欠かない魔界一のモテ男の最大の失敗だった。

おそらくヴラド・ツェペシュも自分の恋心に気付かず一緒にいたのかもしれないな。
あの男は冷徹で誰かを愛するなんて感情を持ったことがなかったのだから。

そして、自分の気持ちに気が付いた時にはもう遅かった。

人間とヴァンパイアが愛し合うことを禁じる呪いが、二人を引き裂いた」


「人間とヴァンパイアが愛し合うことを禁じる呪い?」


怜央が聞き返すと、赤銀は満足そうに頷いた。