「ぶッ!」


「茜? 大丈夫か!?」


「いたたたた……」


茜は真っ赤になった鼻を手で押さえながら、上半身だけ起き上がった。


その間抜けな姿を見て、これは本物の茜だなと怜央は確信したのである。


「もう、何~~~」


茜が引っ張られたように感じた足元を見てみると、いつの間にか足鎖が付けられていた。


両足を引っ張るも、ビクとも動かない。


「怜央ちゃん、あたしそっちに行けないみたい」


茜は今にも泣きそうな顔で怜央に言った。


「俺は大丈夫だ! それより茜、怪我はないか!?」


「さっき鼻をぶつけたこと以外は何も……」


「今までどこにいたんだ!? なんか変なことされてないか!?」


「ずっと真っ暗な狭い部屋の中に閉じ込められてたの。
扉はどこにもなくて、ただ真っ暗な四角い箱みたいな所。
ずっと怜央ちゃんの名前を呼んでたら、急にここに放り出されて……」


「そうか。ごめんな、怖かっただろ」


怜央の表情があまりにも優しくて、茜は泣きそうになった。


本当は凄く怖かったのだが、茜はぶんぶんと勢いよく首を横に振った。