怜央は急いで男がいた路地裏に行ってみたが、どこを見渡しても男の姿はなかった。


「どうしたの怜央ちゃん、恐い顔して」


「執事みたいな服を着た男がここに立ってたんだよ!」


「執事? でもこの路地裏、脇は大きな壁に囲まれてるし、長い一本道だし隠れる所なんてどこにもないよ。

どんなに早く走ったって一瞬で通り抜けできる距離じゃないし……」


「でもさっきここに……!」


「じゃあ、消えたってこと?」


(消えた……確かにそう見えた。でも、そんなことあり得るはずがない……)


「見間違えた……のかな」


「寝ぼけてたんじゃない?あたしも昨日ドキドキしちゃって眠れなくて!

怜央ちゃん今日新入生代表挨拶するんだもんね、そりゃ緊張して寝れなくなるよね」