「誕生日はどこ行くの?」
「あー。別に。ちょっと食事行って、その後ケーキ食べて」
「ああいいなぁ。今日はラブラブね」
「うわっ」
素っ頓狂な声につられてみると、どうやら手が滑ったらしい。
赤くなったマサが、神妙な顔をして失敗した分のクリームを丁寧に掬い取っている。
「詩子、あっち行ってろよ」
「ハイハイ。ごめんねー邪魔して」
「お前こそどうなの? あの男、毎日来てんじゃん」
「え?」
今度はあたしの方が顔を赤くする番だ。
「どうって。別にどうでもないわよ。
宗司さん、ただのお客さんよ?」
「ただの客が毎日来るかよ。詩子の事狙ってんじゃないの?」
「そんな……事無いわよ。だって、あたしとても女扱いされてるようには思えないし」
そうよ。
だって、あたし。
あの人の前で可愛い姿なんか一度だって見せてないし。
むしろ本音見せすぎでドン引きされる心当たりならあるけど。



