「はい、お待たせしました」
「ありがとう」
そこでようやく参考書を置いて、ケーキに向かい合う。
「うわ、うまそう。詩子さん、これはどういうケーキ?」
「紅茶のクリームを使ったミルフィーユよ。父さんが考案したやつで結構人気があるの」
「ああうん。おいしい」
宗司さんは、あたしが忙しくないときは、必ずケーキについての説明を聞く。
学校の先生志望だからなのかしら、この知りたがり精神は。
「これにフルーツいれてもいいかもね。ベリー系が合うかなぁ」
「あ、それもいいね。詩子さん今度作ってよ」
「や、無理よ。あたしに出来る訳ないでしょ。父さんに言っとくわ」
時々交わされるこんな会話に、何だかどぎまぎさせられる。



