「すみませーん」


続いて注文だ。
なんだかんだと結構忙しい。

お決まりの笑顔で、呼び出されたテーブルに向かう。

青年一人に子供三人の組み合わせ。
この人の子供にしちゃでかいから、親戚のお兄さんとかそんなところかしら。


「わたし、オレンジジュース」

「俺も」

「僕は、りんご」


次々と出てくる子どもたちの注文を書きとめる。
ところが、しばらく待っても唯一の大人であろうこの青年が何も言わない。


「せんせーは? 決まった?」


先生?
そんな年にも見えないけど、先生なの?

まじまじと青年を見ると、人の良さそうたれ目のしまらない顔で、くしゃくしゃの黒髪。
服装もネルシャツにスラックスといった至って平凡な格好で、先生にはとても見えない。


「うーん。ブレンド? あーでも、アメリカンでもいいかな。たまにはカフェオレもいいか……」


悩む先生。
いやいやいや。
ウェイトレス呼んでから悩むかぁ?

あたしは、血管がぶち切れそうなのをかろうじて堪える。

早く決めてよ。
笑顔がひきつっちゃうじゃないの