「……宗司さん、こ、こんにちは」
声は上ずって、ちゃんと言葉になってるのか分からない。
「今日は何がおススメかな」
そう言って、カウンターに座る彼の動きを、あたしはじっと見ていた。
ドキドキしている心臓とは対照的に、妙に安心した気分になる。
よかった。
そう、思った。
思ってしまった。
自然に熱くなってくる顔を、自分の手で抑える。
また来てくれた。
嫌われてなかった。
「ねぇ、詩子さん。このケーキは?」
昨日みたいに話しかけてくれる彼に、あたしの口元が勝手に緩んでくる。
「今日は酸味のある、オレンジのケーキがおススメです」
良かったと、そう思ってしまうのなら。
あたしは、彼が来るのを待ってたってことだ。



