ショコラ~恋なんてあり得ない~


「おい、詩子。こっちにこい」


親父に呼ばれて厨房の方に入る。

そこには、ふわふわと湯気がたつお皿があった。
中身を覗き込むと、トマトとパンを煮たパン粥だった。


「米なかったからこれで我慢しろ」

「うん。……ありがと」


親父の心遣いに、素直に感謝してスプーンを手にする。
そして食べようとすると、親父があたしの真向かいに椅子を持ってきて座った。

なによ。なんで見るのよ。
イヤだな、落ち着かないんですけど?


「妙に……素直だな」


ボソッと一言。

素直で悪いか!
いちいち反抗してる元気がないのよ。


「作ってもらったんだから当たり前でしょ」

「カレーには文句タラタラだったじゃないか」

「それも当たり前でしょ! 二日酔いなのにカレーなんか食べれないわよ!」


ブリブリいながらも、トマトパン粥は美味しい。
少し酸味がきいてるからさっぱりする。