「ふうん。和美ちゃんにおごってもらったんだ。かっこわるー。デートだったんでしょ?」
「うっ」
「二人でどこに行ったの?」
「や、その。ほら」
「きゃー、えっちぃなぁ。マサったら」
「お前、どうしてそう、客がいないと口が悪くなるんだよ!」
「やあね。これが地よう」
財布から二千円を出し、真っ赤になったマサにひらひらと見せる。
「百円はおごってね」
「くうっ」
奪い取るように二千円をとっていくマサ。
ああ楽しい。
可哀想だから、百円分は後でなんかおごってあげよう。
調理師学校でも店でも、ケーキにしか目がいってなかったマサ。
和美ちゃんと出会って、なんとなく人間らしくなった気がする。
だって前は無表情でクリーム泡立ててたりして怖かったもん。
いいな。
そんな風に変われるのは。
何だか羨ましい。



