「いただきます」
そう言って、一口含む。
水なんだけど、レモンの酸味がスーッとしみ込んでおいしい。
今の二日酔い状態の胃腸に染みわたる。
「おいしい。レモン水ね」
「この先、暑い時期になったらお冷をこれに変えてもいいかなと思うんだが、どうだ?」
「いいわね。賛成。というか、あたしだったらこれだけでもいいわ。水だけで一時間くらいねばれそう」
「それじゃあ、商売にならんだろう」
苦笑しつつも満足気に親父は冷水ポットを冷蔵庫に戻した。
「これは試作だから好きに飲んでいいぞ。まだ客も来ないし、少し座ってなさい」
「うん」
そう言って親父はカウンターの方へ戻っていく。
小さな声で聞こえてくるのは、相変わらずのケーキ談義。
好きよね。あの二人。
冷蔵庫を開ければ、もう沢山のケーキが出来上がって冷やされている。
今日のケーキの種類は七種類。
朝から焼いてんのよね、あの人。



