いやでも、似合わないと言うのは内面だけの話だ。

スレンダーな体系に長く艶のあるストレートの黒髪、色白のぱっちり二重。
見かけだけで言えば清楚なお嬢様であるあたしが店に立つと、店には華が出て、男性客が増えるのだ。

だから店の中では、そう演じている。

優しげな笑顔で注文を聞き、静かな動作でティーカップを置く。

お会計の際には、はにかんだ笑顔も忘れない。

それで売り上げが上がるっていうなら頑張りましょう。


けれど、あたしの本性はそうではない。

ケーキより焼き鳥が好きだし、コーヒーよりビールが好きだ。

正直、継げと言われるなら喫茶店ではなくてラーメン店が良かった。

大声で、「はい、お待ち!」とか言ったらスッキリしそうだもん。


なのに、ここじゃおすましして、外見目当ての男の人たちに愛想振りまかなきゃならない。
ストレスも溜まるってもんだ。