「いいわ。あたしが行く」
鼻息荒く厨房に入ると、鋭い視線が突き刺さる。
そんなのに負けたりはしないけどね。
「おはよう。父さん」
「……お前、昨日どこ行ってた?」
「……帰って来たの?」
やばい。自分の痛いところを突かれてしまった。
イヤでも待って?
あたし今日から二十三歳よ。
もうとっくに大人の女よ。
外泊の一つくらいして何が悪い。
「親父の想像してる人の家にいた」
「アイツっ……!」
「別にいいでしょ。あたしと宗司さん、ちゃんと付き合ってんのよ?」
「じゃあなんで俺に黙って」
「いちいち父親に彼氏のところに泊まって来ますなんていう娘はいないわよ」
「一般論を言うな! そういう娘になれ!」
「ばっかじゃないの。イヤよ!」



