ショコラ~恋なんてあり得ない~


 それにしても進展がないのが、親父と母さんの関係だ。

いつ父さんに聞いても「まだ教えられない」とか言うばかり。
母さんもだ。

あの二人のそういう秘密主義みたいなところは嫌い。
あたしだけのけ者にするのもいい加減にして欲しいわ。

でも、あの庄司さんと結婚したって話も聞かないから、まあ頑張っているのだろうとは思う。


「おはよー」

「おはよう。詩子、お前なんかやったのか?」

「え?」


『ショコラ』に入るとすぐにマサがこそこそと寄ってきて言う。

なによ。いきなり。
感じ悪いな。


「何かって何よ。また父さんの機嫌でも悪いの?」

「もう最悪だよ。俺今日まだ挨拶しかできてない」

「なにそれ」


マサもそこまで気を使うことないのに。
いくらオーナーが親父だからって言って、職場で割り切れないのは親父が悪いんじゃないの。